【企画:プロジェクト現場を訪ねる】(4) 韓国放送通信大学オープンな新システム
在学している生徒数が20万人で、国内大学最大の大学情報DBを保有する韓国放送通信大学(以下、放送大という)が、2月21日、既存のメインフレーム上で運用されていた業務をオープンなシステムであるUNIXに完全に切替、新システムの開通により、新学期の履修登録等の業務を成功的に遂行した。
1972年の設立以来、33万人の卒業生と20万人の在学生を持っている放送大は、遠隔教育による大学教育が行なわれるという点からITインフラと教育環境が直結した教育機関である。
これまで同大学は、毎学期受講申請の時になると、20万以上の受講申請が同時に殺到し、システムが停止するなどのシステム障害が頻発していた。
しかし、新システムの稼動現場を訪問し、超大型大学情報DBの成功的な変換アップデート及び成果と供に、新オープン型システム環境で提供されている教務関連の手続きと教育サービスを調査した結果、オープンなシステムの導入により、受講申請にかかる時間の大幅な短縮を実現したことが判明した。そして、新システムは従来の学事業務の効率性を数十倍も引き上げたという評価を得た。
同大学は2003年8月、放送大IT基本計画の中に80億ウォンの予算を策定、オープンなシステムを導入することにしてて、2004年2月から主事業者であるサムスンSDSと本格的なプロジェクトに踏み切った。
放送大の既存の電算インフラはIBMのメインフレームRS6000S70、M80、S390機種で運用されており、そのうちコア業務である大学情報DBは、RS6000S70機種で運用していたが、これをオープン型に切替えるため、サーバ(韓国HPのスーパードーム4台とrp74104台)を導入した。その内、DBはプロセッサー40個が搭載されたスーパードーム2台に移転し、残りのサーバはアプリケーションサーバで構築した。
その他同大学は、韓国ティーマックスソフトのメインフレームリホスティングソリューションであるオープンフレームを適用し、メインフレーム上の各種応用プログラムをUNIX基盤に変換した。また、DB2で運用されていたDBもOracle9i基盤に変えた。
オープン型環境に移転した後、去年7月に1次システムの開通を行った。これにより、それまで一日かかっていた受講申請がたったの一時間で完了できるようになった。1次開通で放送大の新オープン型システムは合格点を取った。
今後のプロジェクトはオープン型に切替えられた新ハードウェアインフラ上に新サービスを導入することである。同大学は、エンタプライズポータル(EP)と学生個人毎に異なるウェブ環境を提供する個人化サービスを導入した。
EPにより学校広報や学事業務が同一ウェブ環境で混在されていたものが分離された。また、出版、図書館、電算、大学院などの学校サービスなど、サービス毎に必要だったIDを、シングルサインオン(SSO)を導入することで単一IDで統合し、データの重複や非効率の要素を取り除いた。
同大学の場合、複数専攻生、卒業生、転科生をはじめ、管理対象IDが67万個に達するため、単一IDへの統合により、大学教務関連事務の効率性が大きく向上したという評価を得ている。
エンタプライズポータルの導入による最大の変化は、今までは全ての学生に提供されていた同一のウェブページがマイページ化されたことである。これにより、学生は履修登録状況などを簡単に確認できるようになるなど利便性が高まった。
同大学は、初期オープンな環境の導入およびプロジェクト計画書の段階でのみTFTを運用し、実プロジェクト遂行段階では、係員を各自のもとの席に戻した後、全職員がプロジェクトに関与するという方式で、人力運用を行った。また、サムスンSDSと協力会社を含んだ外部人力50~60人程度が放送大システム室に常駐した。各単科大学のほか、40個の下位ホームページを完成させるなど、放送大学エンタプライズポータルが完成した。2次システムの開通は2月21日。
また、今回のオープン型システム導入の一番大きな意味付けとしては、今後教育の質の向上につながる様々なアプリケーションとサービスを導入でき、ITインフラの基盤が確立されたというところにおいている。そして、ITインフラの増設や特定ベンダーよりの従属など枝葉の問題も解決できるようになる。
今回のプロジェクトにより、新しいインフラ上での講義サポートシステムなど新規サービスを開発することが放送大学電算院の新たな課題と浮上した。
オープンなシステムの導入は、新規システムを基盤としたアプリケーションの開発とサービスの導入がより重要であることから、放送大学のシステムプロジェクトはこれからも継続的に関心が寄せられる見通しである。
「デジタルタイムズ」 4月6日